2008年09月16日
カップを見つめているトルシィが、かすれた声で呟く。
「どうやったら、あの子のように水が消せるようになるんだろう」
力のないその声に、オリマはどうしようかと視線を走らせた。
子供と違い、励ますのか、慰めるのか、その判断がつかない。どうしようと悩んだ自分に気がつき、オリマはクッと笑った。
悩むなんてらしくない。
言わなければいけないことを、言うだけだ。
「見たから出来る、って物でもない。
それは何度も話しただろ」
小さなため息と同時に、トルシィが肩を落とす。
「想像できることしか表せない」
テーブルの上で組まれた手に、オリマがゆっくりと手を伸ばす。
「トルシィに想像できる事でしか、トルシィの出した水は変化しない。
『消える』という内容を想像できないなら、トルシィが想像できる
『水が消える』を想像しなきゃいけない」
オリマの手がゆっくりとトルシィの手を撫でる。
「トルシィ」
「ん」
「水は蒸発するんだろ?」
断言をしないのは、それが全てではないから。
トルシぃが判断した「水」の変化は「蒸発」による「気化」だ。それ以外の方法も、そのやり方も、トルシィが想像できなければ、教えても意味がない。
トルシィの手を撫でながら、オリマはもう片手でテーブルの上の水差しを取った。
タプン、と水の音が小さく響く。
オリマが水差しを傾けると、当然のごとく中に入っていた水がテーブルの上へとこぼれ、広がる。
「さぁ」
短く、一言で、オリマはトルシィを促す。
「でも……」
「朝は量が多かったろ。
ここにあるのは少しだ。
大丈夫、いつも食事を作ってくれるのはトルシィだろ?
思い出して」
水差しを置き、両手でトルシィの手を包むようにして撫でる。
テーブルの上へと広がった水。
ぽたぽたと床へ落ちる音。
震えるように吐き出された、トルシィの息。
ユラリ、と湯気が上がったような気配がして、テーブルの上の水がゆっくりと減っていく。
消えるというよりは、乾く、に近い。
ゆっくりとだが、テーブルの上の水が全てなくなった。
ほぅ、と長く息を吐き出したトルシィに、オリマがふっと笑う。
「な? 出来るだろ?」
その言葉に、トルシィが少しだけ笑みを見せた。
触れたままの手を引っ張るようにして、オリマが椅子から立ち上がる。つられるように、トルシィが立ち上がった。
「行こう」
「どこに?」
「忘れないうちに」
そういって手を引っ張って歩き出す。
部屋をでて、そのまま教会をぬけて外へと足を踏み出す。
日中の熱い空気が嘘のように、ひんやりとした夜の空気が肌に触れた。
連れて行かれたのは、昼間井戸からくみ上げた水受け。
「出来るだろ。
さっきも出来たんだ。
ちょっと、量が増えただけで、同じだ」
つないだ手に力を入れて、薄暗い闇の中でオリマが笑う。
片手を胸にあてて、トルシィは先ほどと同じように、息を吐き出した。
「どうやったら、あの子のように水が消せるようになるんだろう」
力のないその声に、オリマはどうしようかと視線を走らせた。
子供と違い、励ますのか、慰めるのか、その判断がつかない。どうしようと悩んだ自分に気がつき、オリマはクッと笑った。
悩むなんてらしくない。
言わなければいけないことを、言うだけだ。
「見たから出来る、って物でもない。
それは何度も話しただろ」
小さなため息と同時に、トルシィが肩を落とす。
「想像できることしか表せない」
テーブルの上で組まれた手に、オリマがゆっくりと手を伸ばす。
「トルシィに想像できる事でしか、トルシィの出した水は変化しない。
『消える』という内容を想像できないなら、トルシィが想像できる
『水が消える』を想像しなきゃいけない」
オリマの手がゆっくりとトルシィの手を撫でる。
「トルシィ」
「ん」
「水は蒸発するんだろ?」
断言をしないのは、それが全てではないから。
トルシぃが判断した「水」の変化は「蒸発」による「気化」だ。それ以外の方法も、そのやり方も、トルシィが想像できなければ、教えても意味がない。
トルシィの手を撫でながら、オリマはもう片手でテーブルの上の水差しを取った。
タプン、と水の音が小さく響く。
オリマが水差しを傾けると、当然のごとく中に入っていた水がテーブルの上へとこぼれ、広がる。
「さぁ」
短く、一言で、オリマはトルシィを促す。
「でも……」
「朝は量が多かったろ。
ここにあるのは少しだ。
大丈夫、いつも食事を作ってくれるのはトルシィだろ?
思い出して」
水差しを置き、両手でトルシィの手を包むようにして撫でる。
テーブルの上へと広がった水。
ぽたぽたと床へ落ちる音。
震えるように吐き出された、トルシィの息。
ユラリ、と湯気が上がったような気配がして、テーブルの上の水がゆっくりと減っていく。
消えるというよりは、乾く、に近い。
ゆっくりとだが、テーブルの上の水が全てなくなった。
ほぅ、と長く息を吐き出したトルシィに、オリマがふっと笑う。
「な? 出来るだろ?」
その言葉に、トルシィが少しだけ笑みを見せた。
触れたままの手を引っ張るようにして、オリマが椅子から立ち上がる。つられるように、トルシィが立ち上がった。
「行こう」
「どこに?」
「忘れないうちに」
そういって手を引っ張って歩き出す。
部屋をでて、そのまま教会をぬけて外へと足を踏み出す。
日中の熱い空気が嘘のように、ひんやりとした夜の空気が肌に触れた。
連れて行かれたのは、昼間井戸からくみ上げた水受け。
「出来るだろ。
さっきも出来たんだ。
ちょっと、量が増えただけで、同じだ」
つないだ手に力を入れて、薄暗い闇の中でオリマが笑う。
片手を胸にあてて、トルシィは先ほどと同じように、息を吐き出した。
